アントニオ・ロウレイロ 「イン・トーキョー」
Antonio Loureiro "In Tokyo"
CD定価¥2,484(税込)NKCD-1010 (qb006) 発売元: NRT / quiet border
販売元: BounDEE by SSNW

ブラジル最注目シンガーソングライターの新作は、日本のトップミュージシャンとのバンド編成による奇跡の東京公演を収録した作品。新曲2曲+ミナス名曲のカヴァーも収録。

とうとう、ミナスという中央分離帯のような地域までから音楽が届けられ、とうとう、伝統的なブラジル音楽から最も離れた、ひょっとしたらまったく新しい、21世紀のブラジル音楽が、とうとう生まれたかも知れないと、地球上で数千人を騒然とさせた天才、アントニオ・ラウレイロの『So』の1曲目、「Pelas Águas」の、緻密で斬新な、できたての新興国家の都市のように知的な狂気が輝く変拍子にもパチーダは生きている。――菊地成孔(TRANSIT 25号より抜粋、原文ママ)

菊地成孔氏が雑誌”TRANSIT”のブラジル特集号に記した秀逸な一文である。2012年の後半に発表された2ndアルバム『ソー』によって、アントニオ・ロウレイロは一躍注目の存在となった。話題はブラジル音楽の枠をとうに超え、サウンドの新しさという点からコーネリアスやジェイムス・ブレイクが引き合いに出されたり、一方ではジャズのプレイヤーや評論家、リスナーからの評価も非常に高いものがあった。

アントニオ・ロウレイロの音楽は、まったく新しい。
アントニオ・ロウレイロはブラジル音楽を正統的に継承した音楽家である。
この代表的なロウレイロ評の二つともが、結局のところ同じことを述べているように感じられるのが彼の音楽の面白いところである。
多彩なゲスト・ミュージシャンが参加していた前作『ソー』ではあるが、あくまでそのベースとなっているのは、ロウレイロ自身の演奏による多重録音だった。ピアノ、歌、ドラムス、ギター、ベース、ヴィブラフォンなど10種類近くの楽器を操るロウレイロの頭の中は、いったいどうなっているのだろう。何がどうなると、こんな音楽を作れるのだろうか?ロウレイロの、『ソー』の謎は、つまるところそんな問いとイコールにちがいない。2013年8月の初来日ツアーにかけつけたリスナーのなかにも、そうした疑問を持ってライブに臨んだ方が多かったのではないだろうか。
ロウレイロの初来日公演を実現するにあたって、『ソー』の世界観をどのように再現するか、ということはなかなか難しい問題だった。芳垣安洋(ドラムス)、鈴木正人(ベース)、佐藤芳明(アコーディオン)というメンバー編成については、招聘元となったフェスティバル<SUKIYAKI TOKYO>のプロデューサー、堀内求さんとともに考え、各メンバーおよびロウレイロ本人によって受け入れられた。その結果が、いまお聴きのこのレコードである。ロウレイロは現在の活動拠点をサンパウロに置いているが、キャリアをスタートさせたミナス地方でもライブを継続的に行っている。サンパウロにはサンパウロの、ミナスにはミナスのロウレイロ・バンドの型がある。ブエノスアイレスでもたびたび公演を行っているが、その際はアカセカ・トリオやサンティアゴ・セグレト(ディエゴ・スキッシ・キンテートでも活躍するバンドネオン奏者)らと演奏しているという。メンバーそれぞれの個性を認め、ともに音楽を共有する姿勢の表れで、ライブに対しての非常に開かれた考え方だと思う。
それぞれに多忙を極めるメンバーでもあり、リハーサルに多くの時間を割くことはできなかったが、それでもすぐに全員が打ち解けた。依頼前からアルバムを聴きこんでいたという鈴木正人は、ロウレイロの音楽を高次元で理解し、献身性をもって支えている。佐藤芳明がみせた演奏のキレ味に、ロウレイロは「クレイジー」という褒め言葉によって称えている。芳垣安洋にはドラマー同士という共通項もあり、その音楽観に深いところで感じるものがあったようだ(ロウレイロは演奏家としての自身をドラムス、ヴィブラフォン奏者として第一に考えていると常々言っている)。愛用しているドラムのパーツなど、ミュージシャンらしい会話で盛り上がっていたのも印象的だ。譜面はコード譜がほとんどだったから、細部は各メンバーに委ねられていたし、リハーサルでのロウレイロからの指示も大まかなものが多かったように思う。ただしテンポの変換や音量のダイナミズムには細心の注意を払い、何度となく繰り返す場面もあった。リハーサルにおいて伝えたいことをどの楽器でもすぐに表現できてしまうのは、やはりマルチ奏者の強みだろう。構造的にも拍子的にも入り組んだ楽曲が多く苦労したはずだが、全員がコンポーザーであったことも成果につながっているはずだ。このメンバーではたった一度きりのライブであり、ファーストテイクの魔法がここには詰まっている。残念ながらオクラ入りとなってしまった曲もあるが、それはその場で体験した人の宝物としておいておこう。
本作収録曲の多くは『ソー』所収のものなので、未聴の方はぜひ体験していただきたい。唯一のカヴァー③はミナスを代表する名曲で、この選曲に歓喜したファンも多いだろう。①は未発表曲、本作唯一の弾き語りトラック⑤はツアー前にできた新曲とのこと。前述の<SUKIYAKI TOKYO>とともにロウレイロ初来日の実現をもたらしたフェスティバル<SUKIYAKI MEETS THE WORLD>への出演と、熊本・姫路での公演はピアノ弾き語りによるセットだった。日本最初の公演となった南砺市ヘリオスホールでの演奏は当初ややナーバスだったものの、ベーゼンドルファーのガラスのような響きで聴く彼のピアノもまた、素晴らしい。台風による雷雨が響くさなかに行った熊本公演はもはや語り草となっている(果たしてあのあと、お客さんは無事帰路につけただろうか…)。姫路ハンモックカフェでは、会場の空気にほだされたインティメットな演奏が聴けた。涼やかな虫の音と、ヨットが擦れあって生じた鐘の音のようなサウンドが背景に重なり、ミナスの片田舎にある教会の風景が二重写しになった(大げさと思われるだろうが、せいぜい嫉妬してほしい!)。ピアノと歌のみで聴くアントニオ・ロウレイロにはまた別の趣があり、いつか将来この編成での録音もできればと思っている。ツアー終了後にシークレットで参加した日本のコンポーザーズ・ユニット”Quiet Dawn”(藤本一馬/ギター、林正樹/ピアノ、沢田穣治/コントラバス、田中徳崇/ドラムス )との共演にも未来を感じさせた(キーボードと歌、ドラムスでの参加)。
本作とその時の日本ツアーでは一曲も演奏しなかったが、2010年の1stアルバム『Antonio Loureiro』も、『ソー』に至るプロトタイプともいえる名作だ。当時の楽曲を演奏する気分にはなぜかなれないけど、今も気に入っているよ、とは本人の談。2014年には、ヴァイオリン奏者ヒカルド・ヘルスとの連名による『Ricardo Herz & Antonio Loureiro』がリリースされた。ヴィブラフォン奏者として臨んだアルバムであり、半数の楽曲を提供するコンポーザーとしてのアルバムでもある。ブラジル・インストゥルメンタル・シーンの最高水準に位置する傑作であり、同時にポスト・クラシック的なサウンドを志向する室内楽作品となっている。ほかにロウレイロが参加した関連作として、アレシャンドリ・アンドレス『マカシェイラ・フィールズ』、ハファエル・マルチニ『Motivo』、クリストフ・シルヴァ『Deriva』を挙げておきたい。いずれもロウレイロとキャリアを共にしてきたミナスの若き盟友たちであり、新時代のサウンドが聴ける最高のアルバムだ。
本作録音時でまだ27才、今後もロウレイロの動向から目が離せそうにない。
2014年8月 成田佳洋








◆profile
ブラジル・サンパウロ生まれ、27才(本作録音時)。ミナス・ジェライス連邦大学にて作曲と鍵盤打楽器を学ぶ。
2000年よりプロとしてのキャリアを開始。トニーニョ・オルタ、ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートをはじめとした多数の作品やライブに参加、キャリアを重ねる。グループ「A Outra Cidade」「Ramo」のメンバーを経て、2010年に初のソロ・アルバム『Antonio Loureiro』を発表。この作品が日本でもミュージックマガジン誌「ベストアルバム2010」にて高橋健太郎氏(音楽評論家)によって1位に選出されるなど、話題となる。ポルトガル、フランスでもツアーを行い、国際的に注目を集める。隣国アルゼンチンのアーティストとの交流も盛んで、アカ・セカ・トリオ、ディエゴ・スキッシといった最注目アーティストたちとも共演するなど、ミナス=サンパウロ=アルゼンチンを核とした南米の器楽系ルネッサンスの中核的存在となりつつある。 現代ブラジルでその将来をもっとも嘱望されるマルチ奏者であり作曲家、シンガーソングライターである。

◆TRACK LISTING
1. Livre (Antonio Loureiro)
2. Cabe Na Minha Ciranda (Antonio Loureiro/Siba) 
3. Tudo Que Você Podia Ser (Márcio Hilton Fragoso Borges/Salomão Borges Filho)
4. Boi (Antonio Loureiro/Makely Ka)
5. Intensidade (Antonio Loureiro)
6. Pelas Águas (Antonio Loureiro)
7. Lindeza (Antonio Loureiro)
8. Reza (Antonio Loureiro)
9. Luz Da Terra (Antonio Loureiro)
Total time 62:45

Antonio Loureiro: piano, vocal
芳垣安洋/ Yasuhiro Yoshigaki: drums
鈴木正人/ Masato Suzuki: bass
佐藤芳明/ Yoshiaki Sato: accordion
Produced by Antonio Loureiro
Co-Produced by 成田佳洋/ Yoshihiro Narita (NRT)
Recorded by 井口寛/ Hiroshi Iguchi at WWW, Tokyo (29th August 2013)
Stage Producer: 堀内求/ Motomu Horiuchi (novus axis) for festival “Sukiyaki Tokyo”
Mixed and Mastered by 井口寛/ Hiroshi Iguchi
Design & Illustration : 山口洋佑/ Yosuke Yamaguchi 
Photography: 三田村亮/ Ryo Mitamura
03-3461-1161
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